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日本とドイツが、核融合技術の共同開発に乗り出す見通しとなった。両国は2030年代にドイツ国内で核融合発電施設を建設する構想を軸に協議を進めている。開発した技術は日本での展開も視野に入れる。関わる企業として、京都フュージョニアリング、Siemens Energy、同社に出資する三井物産の名前が挙がっている。注目すべきは、話題が炉の中のプラズマ(=超高温の電気を帯びたガス)だけにとどまらない点だ。発電設備、電力変換、商用プラントを支える部品や供給網まで含めた、発電所としての全体像が議論の対象になっている。研究段階の技術を、電気を売る事業へ移すための動きといえる。
引用元: 日本とドイツ、2030年代の核融合発電施設建設に向け共同開発へ(Nikkei)
分析・見解
炉の性能より発電所としての完成度が問われる段階
核融合というと、炉の中で熱を生み出す部分に関心が集まりやすい。しかし電気を売るには、その熱を取り出して電力に変える仕組みが欠かせない。熱を運ぶ配管、蒸気タービン、発電機、送電網につなぐ設備である。今回の構想が示唆するのは、競争の軸が炉そのものから発電所全体へ移りつつあることだ。
Siemens Energyは火力や原子力の発電設備で長い実績を持つ。ここに日本のスタートアップが持つ炉周辺の技術が組み合わさる。役割分担としては筋が通っている。
なぜ日本ではなくドイツが建設地なのか
日本企業の技術を使うのに、最初の建設地がドイツという点は意外に映る。理由の一つは、ドイツが脱原発を完了し、新しい電源を強く求めていることだろう。再生可能エネルギーの比率が高く、天候に左右されない安定電源への需要は大きい。もう一つは、欧州が持つ発電機器の工場群と、重電メーカーの受注体制である。
日本は規制や立地の調整に時間がかかりやすい。海外で先に実証し、得た知見を国内へ持ち帰る道筋は、現実的な選択といえる。
見落とされやすい電力変換と部材の壁
商用化のボトルネックは、意外に地味な部分にある。高温に耐える金属材料、超伝導磁石(=電気抵抗がゼロになる巻線を使う強力な磁石)、燃料のトリチウム(=水素の仲間で、自然界にほとんど存在しない物質)の循環設備などだ。トリチウムは炉の中で自前で作り出す必要があり、この循環が回らなければ燃料が尽きる。
比較のため、国際熱核融合実験炉ITERを見てみたい。建設費は当初見積もりを大きく超え、運転開始も大幅に遅れた。巨大な国際プロジェクトは、部材の調達と調整に膨大な時間を要する。今回のような少数の企業が組む形は、意思決定の速さで勝てる可能性がある。一方で、資金の厚みでは見劣りする。
2030年代という日程の重みと不確実性
2030年代の建設という目標は、一見遠いようで実は厳しい。発電所は設計、許認可、調達、建設を順に進める。着工までに残された時間は、実質で数年しかない。炉の設計が固まらなければ、周辺設備の発注もできない。
そのため、この時期は「完成した発電所を建てる」というより「実証プラントを動かして課題を洗い出す」段階と受け止めるのが妥当だろう。電気を安く売れる時期は、さらに先になる。ただし、実証の場が確保されること自体に大きな価値がある。
ビジネスへの影響
炉の外側に商機がある
核融合の事業機会は、炉の開発企業だけのものではない。高温に耐える部材、真空装置、精密加工、制御ソフト、保守サービスなど、裾野は広い。日本の中堅製造業にとっては、欧州の重電メーカーの調達網に入る好機になる。
動くなら今だ。設計が固まる前に仕様づくりへ関われば、後からの参入より有利な条件で取引できる。まずは自社の技術が、高温、真空、放射線のどの条件で使えるかを整理しておきたい。
商社と金融の関わり方が鍵になる
三井物産のような商社は、技術の開発よりも、資金の手当てと取引先の紹介で力を発揮する。電力会社、メーカー、金融機関をつなぐ役割だ。
投資を検討する企業は、売上がまだ立たない期間が長く続く点を前提に置く必要がある。評価の物差しは、利益ではなく、実証の達成度と調達網の広がりに置くとよい。一社単独で抱え込まず、共同出資や部材供給の形で小さく関わる選択も現実的である。
事業計画に入れておくべき三つの確認事項
第一に、2030年代の実用化は確定ではなく、遅れる可能性を織り込むこと。第二に、各国の許認可制度が異なるため、規制の動きを継続して追うこと。第三に、人材の確保である。核融合に通じた技術者は世界的に少なく、早めの採用や大学との連携が差になる。