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核融合の安全基準を法で定める動き、原発規制との線引きが焦点に

核融合の安全基準を法で定める動き、原発規制との線引きが焦点に

ニュースの概要

自民党が、核融合発電に適用する安全基準を明確にするよう政府に求め、議員立法も視野に入れて動き出した。日本経済新聞が伝えた。核融合は、軽い原子核を高温で融合させてエネルギーを取り出す方式である。ウランの分裂を使う原発とは仕組みが大きく異なる。ところが、国内には核融合を直接の対象とした安全規制の枠組みがまだ整っていない。実験炉の段階では既存の放射線関連の法律で対応してきたが、発電を目指す民間企業が増え、実証炉の建設が視野に入ってきた。どの法律で、どの程度の厳しさで規制するのかが曖昧なままでは、投資も立地も決めにくい。今回の動きは、その空白を国会の側から埋めようとするものだ。

引用元: 核融合発電の安全基準、政府に明確化求める 自民党が議員立法へ(日本経済新聞)

分析・見解

原発と核融合では、事故の起き方がそもそも違う

核融合炉の燃料は、炉の中にごく少量しか入らない。反応を維持する条件が崩れれば、プラズマ(=高温で電気を帯びたガス)は自然に冷えて止まる。原発のように、止めたあとも崩壊熱(=燃料が出し続ける熱)を長く冷やし続ける必要はない。連鎖反応が暴走して炉心が溶ける、という事故の筋書きも成り立たない。

ただし、リスクがゼロになるわけではない。燃料の三重水素(トリチウム)は放射性物質であり、漏えい対策と管理が要る。また、中性子(=反応で飛び出す粒子)を浴びた炉の部材は放射化し、廃棄物になる。つまり、重大事故のリスクは小さく、日常の取り扱いと廃棄物の管理が中心課題になる。

既存の法律に当てはめると何が起きるか

原子炉等規制法は、ウランやプルトニウムを使う炉を想定して作られている。これを核融合にそのまま当てはめると、審査が過剰になり、数年単位で開発が止まる恐れがある。逆に、放射線障害防止法の枠だけで済ませれば、発電所の規模では住民の理解が得られにくい。

海外では、すでに方向性が分かれている。英国は2023年に、核融合を原子力規制から切り離し、環境・安全分野の規制で扱う方針を示した。米国も、加速器や医療用機器と同じ放射性物質の規制に近い枠組みを選んだ。いずれも、核分裂炉とは別物として扱う考え方だ。日本が同じ道を選ぶかどうかが、最初の分かれ目になる。

議員立法という手段が持つ速さと弱さ

議員立法は、省庁の調整を待たずに動ける点が強みだ。国が核融合を優先分野に位置づけ、2030年代の発電実証を掲げる以上、基準づくりが後ろにずれるのは矛盾する。

一方で、弱さもある。法律は理念や大枠を決めるのに向くが、細かな技術基準は専門家の知見が要る。法律ができても、規制当局の体制や審査の人員が追いつかなければ、結局は同じ滞りが起きる。立法と、運用を担う組織づくりを同時に進められるかが問われる。

他国との競争の中で、遅れは静かに効いてくる

核融合は、技術の優劣だけでなく、どの国で最初に建てられるかの競争でもある。規制が明確な国には、資金も人材も集まる。日本の企業が国内で実証できず、海外で炉を建てる事態になれば、製造や保守の産業も一緒に流出する。安全基準の明確化は、安全のためであると同時に、産業を国内に引き留める条件でもある。

ビジネスへの影響

規制の見通しが立つと、資金調達の条件が変わる

核融合スタートアップにとって最大の不安は、技術よりも規制の先行きである。基準が見えなければ、投資家は事業計画の前提を置けない。保険会社も、保険料を算定できない。基準が明確になれば、建設費や工期の見積もりが具体化し、金融機関や事業会社が参加しやすくなる。

電力会社や重工メーカーは、今のうちに自社の知見を整理しておく価値がある。原発の保守や放射線管理で培った人材は、核融合の安全審査にも通用する部分が大きい。

供給網の企業は、基準づくりの議論に早く関わる

超伝導磁石、真空容器、遮蔽材、トリチウムの取り扱い設備など、部材を作る企業は多い。基準の細目は、こうした部材の仕様に直結する。決まってから対応するのでは遅く、業界団体や研究機関を通じて意見を出す窓口を確保しておきたい。

また、海外の基準と大きくずれると、輸出の際に二重の認証が必要になる。国際的な整合性を保つよう働きかけることも、中堅企業にとっては実利になる。

立地を考える自治体と企業は、説明の準備を始める

原発と同じ目で見られると、住民の不安は大きくなる。事故の起き方が違うことを、数字と図で丁寧に示せる企業が、立地では有利になる。基準が法に書かれれば、説明の根拠もはっきりする。今のうちに、トリチウムの管理方法や廃棄物の量を、分かりやすい資料にまとめておくとよい。

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